事業者向賠償責任保険

事業活動による施設・業務遂行・製造物・引渡し作業・受託物等で損害を与えた場合に備える保険です。

1. 賠償責任保険とは

賠償責任保険は、被保険者が偶然な事故により第三者に損害を与えたため法律上の損害賠償責任を負担しなければならない場合に、 それによって被る損害に対して保険金を支払う保険です。
賠償責任保険は一般に、「他人の身体・生命を害したり、 他人の物を壊したりした場合」の損害賠償責任のみを対象とします。したがって、 他人の名誉を毀損した場合や、財物の損壊を伴わないで単に経済的な損害を与えた場合は一般的には対象となりません。

2. 普通保険約款と特別約款・特約

火災保険や自動車保険と異なり、大部分の賠償責任保険は普通保険約款だけでは引き受けができません。 対象とする事業の種類や責任発生原因に適合するよう各種の特別約款が用意されており、 これを普通保険約款と組み合わせて引き受けます。 これは損害賠償責任の発生原因にはいろいろな場合があり、 これらをすべて普通保険約款に盛り込むと複雑になり、かえってわかりにくくなるためです。
さらに、必要に応じて各種の特約を付帯して補償する危険または損害の範囲を特定しています。
なお、賠償責任保険では、個人分野と企業分野が並存するので、 共通の普通保険約款を適用することが困難であり、 「賠償責任保険普通保険約款(個人用)」と「賠償責任保険普通保険約款契約」 の2種類の普通保険約款に分かれています。

3. 支払い限度額

(1) 支払限度額とは
火災保険では、付保される物の価格を基準として保険金額を定めますが、通常の賠償責任保険では、 保険会社の支払う保険金は争訟費用等を除いては、あらかじめ約定した金額が限度となります。 この金額を「支払限度額」といいます。
「支払限度額」は保険会社が支払う保険金の限度額を示すものであって、 被保険者が損害賠償責任を負担したからといって、常に限度額一杯の金額を支払うわけではありません。
損害賠償金や費用の額が支払い限度額以下であれば、その損害賠償金額および費用の額を支払い、 損害賠償金や費用の額が支払い限度額を超える場合には、 保険会社は支払限度額まで保険金として支払い、超過額分は、被保険者の自己負担となるわけです。 ただし、争訟費用・示談交渉費用、被保険者の保険会社に対する協力費用は支払限度額外とし、 協力費用は原則として全額保険金が支払われます(争訟費用は外枠比例となります)。

(2) 支払限度額の設定方法
支払限度額は身体傷害(対人)、財物損壊(対物)の別に設定する場合と、 対人・対物共通に設定する場合があります。
通常、身体傷害については1名あたりおよび1事故あたりの限度額を定め、財物損壊については、 1事故あたりの限度額を定めます。この限度額はそれぞれ1事故についての限度額であり、 保険期間中に何回事故が起こっても、前の保険金支払に関係なく、 1事故の限度額の範囲内で保険金が支払われます。ただし、生産物賠償責任保険、 受託者賠償責任保険および自動車管理者賠償責任保険等では、必ず保険期間中の総支払限度額を定め、 この場合、支払われた保険金の合計が期間中総支払限度額に達すると、 保険会社の支払責任は終了します。

4. 免責金額(自己負担額)

賠償責任保険では事故による損害額のうち一定額を被保険者に負担していただきます。 これを免責金額(自己負担額)といいます。免責金額は身体傷害(対人)、 財物損壊(対物)ごとに設定します。
免責金額は、特別約款・特約ごとに基準の金額が定められています。これを原則として、 増額または削除することが出来ます。

5. 三つの賠償責任リスク

賠償責任保険は、一般に「他人の生命・身体を害したり、他人の財物を壊したりした場合」の賠償責任 のみを対象とします。これは、普通保険約款第1条に定められています。賠償責任保険のベースとなる重要な部分であり 注意が必要です。

1)施設・業務遂行リスク
①貴社が所有、使用または管理する施設
②貴社の業務の遂行
が原因で、他人にケガをさせたり、他人の物をこわしたことにより法律上の損害賠償責任を負担される場合に被る損害に対して、保険金の支払を受けられます。
●工場の爆発により、近隣の民家をこわした。
●ビル建設工事中誤って鉄骨を落下させ、通行人にケガをさせた。
●レストランの定員が料理を落としてお客様にやけどをさせた。
●自転車(原付自転車を除く)で営業中、他人にぶつかりケガをさせた。

2)製造物・完成(引渡)作業リスク
①貴社が製造、販売または供給した製品・消費など
②貴社が引渡した作業
が原因で、他人にケガをさせたり、他人の物をこわしたことにより法律上の損害賠償責任を負担される場合に被る損害に対して、保険金の支払を受けられます。
●販売した飲食物が腐っていたため、お客様が食中毒になった。
●製造、販売したテレビの欠陥により火災が発生し、家屋を焼失した。
●屋根の修繕工事に不備があったため、工事完了後屋根が落ち、家財を破損させた。
●床清掃完了後、フロアの感想が不十分であったため、ビル来訪者がすべって転倒し、ケガをした。

3)受託物リスク
次の①から④までの他人の物をこわしたり、盗まれたことにより、その財物の所有者に対して法律上の損害賠償責任を負担される場合に被る損害に対して、保険金の支払を受けられます。
①貴社が借用している財物
②作業(修理や清掃など)に使用される材料、部品、装置、設備など
③貴社が販売、保管または運送を目的として受託した財物
④貴社が行う作業の対象物のうち、貴社の施設内にある財物
●借りた衣装を汚した。
●メーカーから支給された自動車の交換部品を盗まれた。
●トラックからフォークリフトで貨物を荷卸し中、落下させこわした。
●修理のため預かっていた家電製品を火災により焼失させた。

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